30代、新宿。令和スナックの重い扉を開けたら、そこは「沼」だった。
SNSで噂の「ママが20代」の店へ。明朗会計2500円で手に入れた、都会の孤独の処方箋。
21時過ぎの新宿。ネオンの明かりが、疲れた目に痛いほど刺さる。仕事は山積み、明日の会議も気が重い。まっすぐ家に帰ればいいものを、なぜか体が「どこか」を求めていた。居酒屋でガヤガヤ飲む気分でもないし、バーの静寂に耐えられるほど心も整っていない。
そんなとき、ふとスマートフォンの画面をスクロールして見つけたのが、「令和スナック」という言葉だった。場所は新宿。雑居ビルの3階。SNSの投稿には『ママが自分より若い』『セット料金が明確』という、私のようなビギナーにはあまりにも魅力的なワードが並んでいた。気づけば私は、新宿三丁目の薄暗い路地へと足を踏み入れていた。
勇気を出して、重い鉄の扉をノックしてみた
エレベーターを降りると、そこには黒塗りの重厚な鉄の扉があった。中から漏れてくるのは、控えめな重低音と、微かな笑い声。一瞬、逃げ出しそうになった。これがいわゆる「スナックの壁」というやつだろう。しかし、ここで帰ったら一生「あの日、扉を開けなかった自分」に後悔する気がして、思い切ってノブを回した。
「いらっしゃいませ!」
扉の向こうで迎えてくれたのは、SNSで見た通りの、20代後半だろうか、柔らかなベージュのニットを着た若い女性だった。スナックといえば「紫の髪のママ」を想像していた私にとって、そのカジュアルさは衝撃だった。店内は清潔感があり、かすかに石鹸のような清潔な香りが漂っている。
「おひとりですか? カウンターへどうぞ」
その軽やかな一言で、私の緊張は驚くほどあっけなく霧散した。先客は3人。スーツ姿の40代男性、そして驚いたことに、私と同世代かそれより若そうな女性の2人組がいた。昭和の遺物だと思っていたスナックが、ここでは完全に「令和」の顔をして息づいていたのだ。
「セット2500円」という、魔法の安心感
スナックを敬遠する最大の理由は、そのブラックボックスすぎる料金体系だろう。しかし、目の前のメニュー表には、はっきりとこう記されていた。
- セット料金(アイス、お水、チャーム込み):2,500円
- カラオケ:500円で歌い放題
- 追加ショット:800円〜
この明朗会計こそが、令和のスナックの真骨頂なのだと思う。自分が今いくら使っているかがわかる。その安心感が、酒をより美味しくさせる。ママが手際よく作ってくれたハイボールは、グラスの縁までキンキンに冷えていて、喉を通るたびに今日一日の毒素を洗い流してくれるようだった。
「ここは、みんなが『役割』を脱げる場所なんです。会社員でも、親でもない、ただの自分に戻れる場所を作りたくて」
ママのその言葉は、まるで今の私の心を見透かしたようだった。彼女は元々、大手メーカーで働く会社員だったという。満員電車に揺られ、数字に追われる日々の中で、自分自身が一番「逃げ場」を欲していた。だからこそ、今こうしてカウンターの向こう側に立っている。その経歴を聞いたとき、彼女がママではなく、一人の「戦友」のように感じられた。
Z世代が歌う中森明菜。ここでは世代が溶けていく
夜が深まるにつれ、店内には不思議な一体感が生まれ始めた。カラオケのトップバッターを飾ったのは、端の席に座っていた20代前半とおぼしき若者だった。彼が歌い出したのは、なんと中森明菜の『DESIRE -情熱-』。衝撃だった。
「今の若い子も、明菜ちゃん歌うの?」と、隣の40代男性が目を丸くして尋ねる。若者は「TikTokで流行ってるんですよ。カッコいいですよね、この曲」と屈託なく笑う。そこから会話が止まらなくなった。歌が終わるたびに拍手が起こり、誰かがお酒を注文する。この、適度な距離感と緩やかな連帯感。SNSの「いいね」では決して得られない、体温のある繋がりがそこにはあった。
私も数杯のハイボールの勢いを借りて、久しぶりにマイクを握った。選んだのは、最近流行りのJ-POP。歌い終わった後、見ず知らずの若者から「いい声ですね!」と声をかけられ、思わず顔が綻ぶ。30代になって、こんなに素直に褒められることがあっただろうか。スナックのカウンターは、自己肯定感を少しだけ修復してくれる装置なのかもしれない。
帰り道の足取りが、少しだけ軽くなる夜
時計の針が0時を回る頃、私は会計を済ませた。セット料金と数杯のショット、カラオケ代を合わせても、支払ったのは5,000円ちょっと。居酒屋で漫然と飲むより、はるかに濃密で、心の栄養になる時間だった。
「また、お疲れの時にいらしてくださいね」
ママのその見送りを受けながら扉を出ると、夜の空気は冷たかったが、不思議と体は芯から温まっていた。新宿駅への帰り道、スマホをポケットにしまい、背筋を伸ばして歩いている自分に気づく。明日もまた、なんとかやっていけそうだ。そんな小さな勇気を、私はあの一枚の重い鉄の扉の向こう側で拾ってきたのだと思う。
もし、あなたが今、家でも職場でもない「第三の場所」を探しているなら、一度近くのスナックを覗いてみてはどうだろう。かつての私のように、食わず嫌いで避けているのはもったいない。今はネットで、ママの雰囲気や料金を事前にチェックできる時代だ。私は最近、ファンズを使って、自分に合いそうな店を少しずつ開拓している。そこにはきっと、想像以上に温かい、新しい夜の形が待っているはずだ。
よくある質問
スナックに一人で入っても大丈夫ですか?
はい、全く問題ありません。最近は「一人飲み歓迎」を掲げるスナックも増えています。特に令和スナックは、初心者や女性の一人客が入りやすい明るい雰囲気が特徴です。ママやスタッフ、常連客が自然に会話の輪に入れてくれるので、寂しさを感じることなく自分のペースでお酒と会話を楽しめます。
令和スナックと昭和スナックの違いは何ですか?
大きな違いは店内の明るさと客層の幅広さです。昭和スナックが常連中心の「隠れ家」的な場所であるのに対し、令和スナックはSNSでの集客も積極的で、新規客や20〜30代の若い世代、女性でも入りやすいクリーンな内装が一般的です。明朗会計を徹底している店が多く、初めてでも安心して利用できるのが魅力です。
スナックの料金相場はどれくらいですか?
一般的なスナックの場合、セット料金(チャージ)が3,000円から5,000円程度、これにドリンク代やカラオケ代が加わります。ボトルを入れれば次回以降はセット料金のみで安く飲めます。新宿などの激戦区では「1時間3,000円飲み放題」のような時間制を採用している店もあり、予算に合わせて選びやすくなっています。
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